Illustratorを使って印刷物のレイアウト作業をしていると、とくに文字の大きさなど、今作っているデータが実際にプリントアウトした時にどのくらいの大きさで見えるのかチェックしたい時ってありませんか?
印刷物のデザインなら実際に印刷してチェックするのが一番なのですが、常に作業環境にプリンタがあるとは限らないし、用紙も消費してしまうし…
そこで、Illustratorのデータをモニタ上で実寸に見えるように表示するために僕がやっている方法をご紹介します。
まずは解像度のお話
Illustratorのメニューの「表示」の中には「100%表示」というのがあります。
しかし、「100%表示」して画面に定規をあてて測ってみると分かると思いますが、実寸とは違うんですよね。
おそらく実寸よりも小さく見えていると思います。
これは、モニタの解像度が72ppiだった場合に実寸表示されるようになっているので、解像度が高くなったうえに設定を変えられる最近のモニタでは意味を成さないのです。
つまり、使っているモニタの解像度(ppi)を調べないと、何%の表示で実寸に見えるかが分からないということです。
現在僕が使っているiMac 21.5インチは、ピクセル数を最大の1,920×1,080ピクセルに設定して使用しています。
で、実際に定規でモニタの表示領域を測ってみると、だいたい476mmx268mm=18.74”x10.55”(インチ)というサイズ。
1920/18.74(≒1080/10.55)≒102 から、今の設定でのこのモニタの解像度はだいたい102ppiだということが分かります。
72ppiで「100%表示」すると実寸表示されるわけだから、102ppiだと、だいたい倍率142.2%くらいで表示すると実寸で見えるということになります。
これは僕のiMacの例ですが、皆さんはご自身の使っているモニタで設定しているピクセル数と長さから、上記のように解像度と、何%にすれば見た目実寸表示できるのか調べてみてください。
指定した倍率で表示するスクリプト
さて、見た目で実寸に見えるようにするために必要な表示倍率は分かりました。
でも、毎回Illustratorのウインドウ左下にある倍率表示窓にその数字を入力するのは面倒なので、ここで便利なスクリプトを使います。
僕が実際にiMacのIllustratorで使っているスクリプトを貼り付けます。
(function(){ var viewObj = app.activeDocument.views; for(var i=0; i<viewObj.length; i++){ app.activeDocument.views[i].zoom = 1.425; }; })();
スクリプトなんてわからないという方もご安心を。僕もわかりません(笑)
- 上記のコードをコピー。
- テキストエディタ(Macならテキストエディット、Windowsならメモ帳など)にペースト。
- 4行目の末尾”1.425”のところを、150%なら1.5というように表示したい倍率に変更して保存。
セミコロン(;)は消さないように。 - 拡張子を”.jsx”に変更、わかりやすいファイル名をつけておく。
- このjsxファイルをIllustratorのスクリプトのプリセットフォルダ※にコピー。
(※MacのIllustrator CC 2014なら Macintosh HD/アプリケーション/Adobe Illustrator CC 2014/Presets/ja_JP/スクリプト です。デフォルトでいくつかスクリプトのファイルが入っています。Windowsや他のバージョンでも似たようなフォルダがあるので分かると思います。)
以上で完了です。
スクリプトなんてわからなくてもこれならできますね。
Illustratorを起動すると、ファイル>スクリプトのところに先ほどつけた名前が表示されているはずなので、それをクリックすれば指定した倍率で表示されるはずです。
ウインドウ左下の窓の数値を確認してみてください。
ちなみに、このスクリプトは上述の計算をする前におおよその見た目で倍率を算出していたので、倍率が1.425(142.5%)になっています。
計算結果は142.2%だったので、ほぼ合っていましたね(笑)
もうひと工夫
上記のスクリプトを使ってみるとわかると思いますが、このスクリプトは実行した時点でのウインドウの中央を中心に指定倍率にズームされます。
アートボードにレイアウトしていると、やはりアートボードを中心にして表示させたい。
そこで今度はアクションを使います。
- アクションのパネルメニューから「新規アクション」を選び、「記録」ボタンを押したら、何もせずに「再生/記録を中止」ボタン(■)を押す。
- いま作ったアクションを選び、パネルメニューから「メニュー項目を挿入」を選ぶ。
command+0を押すと、テキストボックスに「アートボードを全体表示」と出るので「OK」。 - もう一度「メニュー項目を挿入」を選び、テキストボックスに先ほどのスクリプトの名前の一部を入力。
「検索」ボタンでスクリプトの名前が出てくるので、選択して「OK」。
こんな感じになります。
僕はスクリプトにもアクションにも「見かけ等倍(142.5%)表示」という名前をつけました。
つまり、最初にアートボードを全体表示した後で、設定した倍率にズームしてやるわけです。
このアクションを実行することで、アクティブなアートボードを基準にして見た目実寸表示されます。
このアクションをキーボードショートカットに登録しておけば一発で実寸表示できますね。
注意(CC 2018以降で解消済)
ただし、このアクション登録の手段にはひとつ大きな問題点が。
Illustratorを一旦終了して再起動すると、このアクションからスクリプト実行の項目だけが消えてしまいます。
(スクリプトのファイル自体は残っています。)
再び上記3.のようにアクションに項目を追加しようとすると、「この名前に一致するメニュー項目が見つかりません。」と言われてしまいます。
どうやらIllustratorを起動した時点では追加したスクリプトが認識されていないようで、再びアクションを登録するためには、メニューから ファイル>スクリプト を選んで、一度スクリプト一覧を表示させる(実行しなくてよい)と、上記3.でスクリプトを選択することができるようになります。
Illustratorを起動させるたびにこの作業をしなければいけないのは面倒ではありますが、一度追加すればIllustratorを終了させない限り使えます。
毎回倍率を手入力するよりはるかに楽ですし、制作物を実寸で確認することは大事なので、我慢しましょう(笑)
実際僕も毎回Illustratorを起動するたびに追加し直していますが、実寸表示はレイアウトのバランスを見るのに大変重宝しています。
(CC 2018以降、上記の不具合は解消されています。)
2021.05.29修正
2018年10月にリリースされたCC 2019以降、「100%表示」にすると、モニタの解像度にかかわらず実寸で表示されるようになりましたが、古い機種の場合正しく表示されない場合があります。
不具合の出る場合は、環境設定>一般 の「100% ズームで実サイズを表示」のチェックを外すと当記事と同様に表示させられます。