やってまいりました、Illustratorの「たったひとつの」シリーズ(いまシリーズ化しました)。
第2回は題して「Illustratorのアピアランスを駆使して、たったひとつのオブジェクトでオレンジの断面を作る」!です。
さわやか系のデザインパーツなんかに使えそうですね。それではさっそくGO!
あの小分けになった「袋」をどうやって作るか、そこが肝。
オレンジなどの柑橘類の断面といえば、実が小分けになった袋(「瓤嚢【じょうのう】」というらしいです)が特徴ですよね。
逆にそれさえ表現できていれば柑橘類と分かります。
その袋をどうやってアピアランスで作るかが今回の最大のポイントです。
それではスタート!
1. 楕円形ツールでオレンジ色の正円を描きます(図では半径60mm)。
続いて、「新規塗りを追加」して、上側の塗りを白に、それを「効果→パス→パスのオフセット…」でオフセットをマイナスにとります。
図では-26mmでとりました。
【円を描きます】
【上に白の塗りを作り、パスのオフセットをマイナス方向にかけます。】
2. 線に色をつけます。
これにもパスのオフセットをつけましょう。
ここの数値は、線が半径の真ん中あたりを通るようにするのがよいです。
図では-13mmでオフセットをとりました。
【線に色(画像では黒)をつけ、またパスのオフセット。線が半径の真ん中を通る感じで。】
3. 2でつくった線を破線にします。
破線の線分と間隔の数値は、作りたい袋の数と破線の半径から計算する必要があります。
図の例で説明しましょう。
2でオフセットを-13mmでとったので、破線の半径は17mm。
円周は17mm×2×3.1415=106.811になります。
これを作りたい袋の数で割ります。
ここでは袋の数は10個にしましょう。
なので、106.811÷10=10.6811。
この数値が「線分」と「間隔」の合計になるようにします。
図では線分=0.69mm、間隔=10mmとしています。
この破線は最終的に袋の仕切りになりますので、線分を大きくすれば袋どうしの間隔があきます。
【線を破線にします。きれいな仕上がりにするためにもちゃんと計算をしましょう。】
4. 破線の線幅を大きくします。
サイズはオレンジの円の外にはみ出して、且つ中の白い円にもかかるようにします。
そしてこの破線に「効果→パス→パスのアウトライン」をかけておきます。
【オレンジ色の部分を突き抜けるように!線幅を広げます。画像では28mmにしています。】
5. このパス全体(といってもこのパスしかオブジェクトはありませんが…)を「オブジェクト→グループ化」でグループ化します。
「アピアランス」パネルを見ると、先ほどまで「パス」だったのが「グループ」となっているのが分かります。
見た目は変わりませんがこのワンアクションが重要です。
【見た目は変わりませんが、「アピアランス」パネルが「グループ」になりました。】
6. グループに対して、「効果→パスファインダー→前面オブジェクトで型抜き」を適用します。
こうすることで、先ほどの破線で下のオレンジの円が切り抜かれました。
これで袋の大まかな形ができました!
【「前面オブジェクトで型抜き」を適用すると、破線で切り抜かれました!】
7. 袋の角を丸くします。
「効果→スタイライズ→角を丸くする…」でもよいのですが、それだと数値を大きくすると形が歪んでしまうので、ここではパスのオフセットの2度がけで処理します。
「パスのオフセットの2度がけ」については下記のリンクを参考にしてください。
Illustratorでプラグインを使わずに、角を丸くする – DTP Transit(Illustrator)
【「パスのオフセット」2度がけで袋の角を丸くしました。画像では、1回目を-2mm、2回目を2mmでかけました。「角の形状」はともに「ラウンド」で。】
8. あとは袋の外を描きます。
「アピアランス」パネルの「新規塗りを追加」で塗りを作ったら、できた「塗り」をドラッグしていちばん下に移動させ、「効果→形状に変換→楕円形…」でサイズを62mm×62mmにします。
塗りを白にしてください。
【「塗り」を「アピアランス」パネルのいちばん下に置いて、「楕円形…」を適用します。】
9. さらに、8で作った塗りを「アピアランス」パネルで複製していちばん下に置き、その塗りの「楕円形」をクリック。
数値を64mm×64mmにして、色をオレンジ色にします。
【さらに下に塗りを複製して、いちばん外の皮を作ります。】
完成!
以上で完成です。
図の「レイヤー」パネルを見ると、パスがたったひとつだけなのが分かりますね。
「アピアランス」パネルにも注目してください。
【完成!たったひとつのオブジェクトでオレンジの断面ができました。】
ちなみに上図の「アピアランス」パネルの「内容」をダブルクリックすると、下図のようにグループ化する前のアピアランスを見ることができます。
袋の個数を変えたいという時などはここで変更できます。
【先ほどの完成図から、「アピアランスパネル」の「内容」をダブルクリックしたところ。工程5でグループ化した中身が参照できます。】
ところで、工程5でなぜグループ化をしたのかというと、「『効果』の『パスファインダー』はグループに対して適用される」という原則があるのです(稀に反する時もあるようなのですが…)。
工程6でパスファインダー(前面オブジェクトで型抜き)を適用したいので、事前にグループ化をしたわけなのです。
グループ化した際に、アピアランスのいちばん上にあった破線が「前面」のオブジェクトと認識されて、破線で切り抜いたわけです(だから工程4で破線にパスのアウトラインをかけているのです)。
まとめ
「たったひとつの」シリーズ、第2回はいかがだったでしょうか。
まあオレンジを使うことはそう度々はないでしょうが、これを参考にしていただいてアピアランスの勉強になれば幸いです。
アピアランスに関しては、これが唯一の答えというわけではありません。
同じ見た目の仕上がりでもいろいろな作り方があると思います。
「こんな作り方もあるよ!」という方がいらっしゃいましたらぜひコメントをお寄せください。
Illustratorのアピアランスは(バグもありますが…)奥が深いです。
発想次第でもっともっと可能性が広がると思っています(かくいう僕もそこまで極めているわけではありませんが…)。
なので、この記事を読んでいただいて「オレンジの断面はこうやって作れるんだ」で終わらないで、「それならこういうものも作れるかも」と、皆さんの発想を広げていって欲しいです。
この記事が少しでもそのきっかけになればと思います。